「メタ認知」という言葉を聞いたことはありますか?
もとは心理学用語ですが、小学校の学習指導要領にも記載されるなど、昨今、教育の現場でも注目されている言葉です。
発達障害の子どもはこの「メタ認知」が苦手といわれています。
今回は、「メタ認知」とは何か、発達障害の子どもはなぜメタ認知が苦手なのか、解説します。
メタ認知とは、「自分の思考や行動を客観的に把握し認識する力」のことです。
「メタ」は「高次の」「より上位の」「一段上の」という意味で、見る・聞く・読む・書く・話すなどの頭を働かせることを「認知」といいますが、「メタ認知」は、認知をより上位からとらえたものです。
例えば、何か作業をする前やしている最中に、「この作業には〇分ぐらいかかりそう」「もっと短時間で終わらすためにはどうしたらよいだろう?」「この方法だったらうまくいくかもしれない」「あと〇分で終わらせよう」というように考えることがありますよね。それがメタ認知です。
メタ認知には、メタ認知的知識とメタ認知的活動の2種類があり、メタ認知的活動はさらにメタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールに分けられます。
メタ認知は小学校高学年から中学生にかけて急速に発達していくことがわかっていますが、発達障害やグレーゾーンの子どもは定型発達の子どもに比べてメタ認知の発達もゆっくり進みます。
定型発達の子どもは、自分が考えていることと他者が考えていることは同じではないということに、幼い頃から気づいていきます。
しかし、発達障害・グレーゾーンの子どもは、自分と他者との境界があいまいで、他者は自分と違う価値観・考え方を持っているということに気づきにくい傾向があります。
「自分と他者の考え方は違って当たり前」ということがわからないため、メタ認知も育ちにくいのです。
文部科学省は、子どもたちに身につけさせたいスキルの1つとしてメタ認知を挙げ、それを活用した授業を行うよう現場に求めています。
では、メタ認知が高くなると、発達障害・グレーゾーンの子どもにどのようなメリットがあるのでしょうか。
メタ認知が高いと、自分の発言や行動が周囲にどう影響するのかが自覚できます。
そのため、周囲の人に不快感を与えないような円滑なコミュニケーションをとることができます。
メタ認知が高いと、自分の感情を客観的に認識できるので、冷静にその原因を考えたり、対策を講じたりすることができます。
例えば、怒られると、悲しくなったり落ち込んだり、それが理不尽なものだったらこちらも腹が立ったりするなど、ネガティブな気持ちになりますよね。メタ認知が高いと、怒られた理由を冷静に分析して、自分に非があるなら改善法を考え、問題は相手にあることがわかれば、ネガティブな気持ちを落ち着かせることができます。
メタ認知が高いと、「ここはわかった。だけど、ここはわからないから、先生に聞いてみよう」と自分の理解度をはかったり、「漢字を覚えるにはこの方法がよい」と適切な学習法を選んだりすることができます。
また、自分の状況を客観的に把握し、目先の楽しみよりも長期的な利益を考えることができるため、「遊ぶ前に宿題を終わらせる」「テスト前日だからテレビを見ずに勉強をする」といった行動をとることができます。
メタ認知が高い人は、目標達成能力や課題解決能力が高いといわれています。
自分が置かれている状況や感情を客観的に認識できるため、適切な目標を立て意欲を保つことや、感情をコントロールし冷静に対処したり、自分の強みと弱みを把握し活かしたり改善したりすることができるからです。
発達障害・グレーゾーンの子どもはメタ認知が育ちにくいとされていますが、トレーニングをすることで向上させることができます。
次はそのトレーニングの方法についてお話します。
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