発達障害(神経発達症/神経発達症群)やグレーゾーンのお子さまは、社会性の獲得が遅かったり偏っていたりします。その特徴の一つ「見えないものを理解する力」について、対応の仕方を見てみましょう。
発達障害(神経発達症/神経発達症群)やグレーゾーンの子どもたちの中には、人とうまくコミュニケーションをとったり、社会的な場面で上手にふるまうことができなかったりする子どもが多くいます。
その一例が、相手が嫌がることや傷つくことを悪気がなく言ったりしたりしてしまうという行動です。
ふだん私たちは人と会話をするとき、「これを言ったら相手はどう思うか」「おそらく相手はこう思うだろう」などと考えながらやり取りを続けます。
しかし、発達障害(神経発達症/神経発達症群)やグレーゾーンの子どもたちは、自分が言ったりしたりしたことが相手にどのように受け止められるか想像することができず、思ったことをそのまま口に出してしまいます。
理由は、相手の立場に立って考える力、人の心を読み取る力がまだ備わっていないからです。
※検索される方の便宜を考慮し、 神経発達症のことを一部「発達障害」と表記させていただいております。
他の人の気持ちやその場の状況を理解したり推し量ったりする能力を「心の理論」と呼びます。
通常、3~4歳ごろから獲得し始めますが、発達障害(神経発達症/神経発達症群)、中でも自閉スペクトラム症(ASD)のお子さまが獲得するのは10歳くらいからといわれています。
「心の理論」を獲得できているかどうか査定するのによく用いられるのが、「サリーとアン課題」です。
設定は次の通りです。
①サリーとアンが部屋にいます。サリーのそばにはかご、アンのそばには箱があります。
②まず、サリーがボールをかごに入れます。
③その後、サリーは部屋を出ていきます。
④そして、アンがボールをかごから取り出して、箱に移します。
⑤部屋に戻ってきたサリーは、かごと箱のどちらからボールを取り出そうとするでしょうか。
正解は「かご」です。
一連の流れ子を見た人は、アンがボールを箱へ移したので、元のかごには入っていないを知っています。
しかし、サリーはボールが箱に移動したことを知らないので、自分の入れたはずのかごを探すはず…。
ということを、ほとんどの大人は理解できます。
ところが、発達に遅れや偏りのある子どもの多くは、アンがボールを箱に移したという事実から判断して「箱」と答えます。
本来「サリーは(アンがボールを箱に移したことを)知らない」から、「もともと自分が入れたかごの中を探す」という推理をしなければならないところ、発達に遅れや偏りのある子どもはその推理ができないのです。
つまり、他者の心を理解するという「心の理論」の獲得がまだできていないのです。
定型発達*の子どもは、さまざまな経験を積みながら、他の子どもの行動を見回す力、状況や言葉などを理解する力、失敗したり叱られたりしても気持ちを切り替える力をつけていきます。
ルールや理想的な行動、相手の気持ちなどを直感的・感覚的に獲得し、その後、理屈や論理でも理解できるようになります。
一方、発達に遅れや偏りのある子どもは直感的・感覚的に理解するのが難しいため、最初から論理的に説明したほうが理解しやすいという特徴があります。
つまり、「これはこうなるから、こうしなければならない」という具合に、一つひとつ理屈を示されると理解しやすいのです。
*定型発達…年齢ごとの発達の特性と比較して遅れがない状態を表す言葉。
発達に遅れや偏りのある子どもは、目に見えないものを想像したり推理したりすることが苦手ですが、言葉を用いて論理的に説明されると理解できます。
定型発達の子どものように直感的・感覚的ではなく、一つひとつ「これはこうなるから、こうしなければならないよね」といった具合に、理屈を通して理解していくのです。
そのため、
●ルールや理想的な行動を言葉で説明する。
●その場の状況をナレーションする。
●他の子どもの気持ちを説明する。
●大人が説明しながらやって見せる。
など、言葉で説明しながら、何度も繰り返しインプットさせることが大切です。
その際、褒め方を工夫したり、見通しを与えて気持ちを切り替えやすくするなどの配慮を加えると、自信がつき、少しずつ頑張ろうとする力が身についていきます。
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