人とコミュニケーションを取ったり、暗黙のルールを理解して行動したり、自分の感情をコントロールしたりするなど、社会生活を送るうえで必要な技能をソーシャル・スキルといいます。
今回は、こうしたスキルを伸ばすのに効果的な「ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)」について見てみます。
発達に遅れや偏りがある子どもは、その場の空気を読むこと、相手の気持ちを想像すること、状況を見て臨機応変に対応すること、暗黙のルールや人間関係の背景を理解すること、感情をコントロールすることなどが苦手です。
そのため、周囲とのコミュニケーションがうまくとれず、対人関係に困りごとをもつことが多くあります。
一般的な子どもは、こうした社会的なスキルを日常生活の中で経験を積みながら身につけていきますが、発達障害(*)やグレーゾーンの子どもはそれを自然に体得するのは難しい状況にあります。
ただ、自然に身につけるのが難しくても、訓練や練習を重ねることで能力は育まれます。
その訓練方法として、近年よく行われているのが、「ソーシャル・スキル・トレーニング(Social Skill Training=SST)」です。
(*)「発達障害」は、医学的には「神経発達症」「神経発達症」と呼ばれます。
また、「発達障がい」について検索される方の便宜を考慮し、 神経発達症のことを一部「発達障害」と表記させていただいております。
ソーシャル・スキルとは、人とのコミュニケーションを円滑にするために必要なコツや能力をいいます。
例えば、知人に会ったら挨拶をする、会話するときは相手の顔を見ながらやり取りをするなどです。
行動の種類としては、大きく【言語的なもの】と【非言語的なもの】に分かれます。
【言語的なもの】
相手に合わせた言葉づかい、話すスピード、質問したり依頼したりするときの言い回し など
【非言語的なもの】
相手との距離感、表情、場面に応じた身振り手振り など
また、ソーシャル・スキルには行動以外のこと、「思考」も含まれます。
例えば、「この言葉を使うと、相手はどう感じるか」「相手を不快にさせないためにはどのように話せばいいか」などです。
気持ちよく会話するための方法を考えることもソーシャル・スキルの一部なのです。
SSTは、次の言葉から成り立っています。
Social=社会
Skill=能力、技能
Training=訓練
SSTでは、人とのコミュニケーションを円滑にするために必要なことを知り、訓練します。
例えば、人と会話をする場面で、
・相手のほうを向く
・相手の目を見る
・適度な声で話す
・相手が話し終わってから話す
・相手が聞ける状態かどうかを確認してから話す
・適度にあいづちを打つ
などです。
では、トレーニングはどのように行うのか、基本的な流れを見てみましょう。
身につけたいスキルの内容と、それがどのような場面で役に立つかを説明します。
このスキルを身につけると人間関係はどのように変化するかなどを具体的に伝えます。
距離感の保ち方、声の大きさ、会話の仕方、あいづちの打ち方、やり取りのタイミングなどを、実際に演じて見せます。
その際、表情、視線、態度、しぐさ、声の抑揚についてのコツやポイントも、その子の性格や特徴に合わせて説明してあげるとよいでしょう。
実際の場面を想定して、繰り返し練習します。
練習を通じて、良かったところや改善したほうがよいところ、アドバイスなどを伝えます。
日常生活で実践します。
実践した後、子どもの気持ちの変化を聞き取ります。
向上したスキルについて大いにほめ、今後の課題については、引き続き見守ったり練習を重ねたりします。
SSTでスキルが身につくと、次のようなメリットがあります。
①対人関係がうまくいく
相手の気持ちがわかるようになり、トラブルの恐れが減る。
コミュニケーションがうまく取れるようになり、充実した毎日を送れるようになる。
②自立につながる
充実した社会生活を送れるようになるスキルが身につく。
ソーシャル・スキルの低下は、発達障害やグレーゾーンの子どもだけに限りません。
大人の社会でも少なくなく、SSTを実践する人が増えています。
より多くの人がこのスキルを身につけることで、多くの人が生きやすい世の中になります。
今後、SSTが果たす役割はますます大きくなるといえるでしょう。
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